−42 心で生きている

2.19
僕は心で生きている。
なんて言うと、優しさに溢れた人間だと言っているみたいだけど、そうではなく、頭で考えるのが苦手だという意味で。

先を見越してとか、論理的にとか、難しく考えるのが苦手だ。
漠然とした不安に流されて、惰性で貯金をしたりしている。
不安を打ち消す力こそ、頭で考えるということなのだと思う。
その力は僕にはないから、いつも漠然とした不安の海の中を息継ぎしながら生きている。

地位とか名声とかから得られる悦というものは、一度頭を通して得られる快楽だ。
頭で社会における自分の立ち位置を考えて喜びを感じるものだから。
僕はそれには興味がない。
それよりも、好きな音楽を聴いて得られる、刹那的な気分の高ぶりを拾い集めて生きていたい。
不安の海の中を泳いで生きる中で、息継ぎをさせてくれるのが音楽なのだ。
たぶんぼくはどれだけ金持ちになっても、偉くなっても、海から上がることはできない。

不安の中を生きているというのは頭で生きている人たちも同じだと思うけれど、彼らは地位とか名声によって、海が見えなくなるのだと思う。

息継ぎしてあっぷあっぷしながら生きるか、海を見ずに生きるか。
海の中をジタバタしている人の気持ちは、ジタバタしている人にしかわからない。

 

どっしりした頼りがいのある男には憧れるが、僕にはそうはなれそうにない。
だから、あっぷあっぷしながら生きる人と、「きっついね」とか言いながら笑ってられる余裕を持ち続けて生きていきたい。