−46 ジモティ詐欺にあった。

引っ越しのドタバタで文を書く気分じゃなくて、しばらく間が空いた。

吐き出したいことができて戻ってきた。

 

大学の先輩で、春から入る会社の先輩でもある人と会った。

近所に引っ越したので、ジモティでベッドを引き取るのを手伝ってもらった。

 

このジモティでの取引、結論から言うと詐欺だった。

部品が全然足りなくて、連絡しようとしたら既に退会していた。

あくまで個人でのやり取りなので、事務局は間に入ってくれないというのがネット情報。

不思議と怒りよりも「うまいことやりやがったな」という敗北感の方が強い。

打つ手ないもんな。

完敗。

 

「なんとしてでも足りない部品を自分で作ってベッドを作り上げてやる」というわけのわからない方向にモチベーションが向いている。

 

 

詐欺にあったことよりもずっとモヤモヤしていることがある。

それが先輩のこと。

一緒に路地を歩いていた時のこと、先輩が最近吸い出したタバコに火をつけた。

疲れた表情で虚空を見て煙を吐いている。

タバコ吸い始めて「タバコを吸う表情」を覚えたというより、「タバコを吸う表情」になったからタバコを吸い始めたみたいな、そんなスレた顔をしていた。

慣れた感じで灰を伸ばした先輩は、慣れた感じで灰を地面に捨て、最後に吸い殻も地面に捨てた。

注意できなかった。

ものすごい嫌悪感を抱いていたのに、その表情を見せることすらできなかった。

 

「先月後輩に奢った額を数えてみたら8万円だった」

「今月の手取りが50万を超えた」

「働きが認められて、今度仕事を任せられることになった。」

会うたびに誇らしげに語る先輩。

会うたびに、そんな先輩の背中がとてつもなく大きく見えて、果たして自分がやっていけるだろうかと不安になっていた。

 

今日、その尊敬よりももっと強迫的だったその感情は、軽蔑に変わった。

「例え仕事がうまくいっても、給料がいっぱい貰えても、こうはなりたくない。」

「こうなるくらいなら辞める。」

 

仕事のせいじゃないと思う。

その人の性格だと思う。

だけど、仕事の忙しさが人を変える部分はあるのだと思う。

変わるのが怖い。

変わってしまった先輩を見てそう思った。

仕事の忙しさの中で、変わらぬ自分を保てる自身もない。

変わるか、辞めるかならば、僕は辞めることを選びたい。

 

大学からの縁を引きずって、引っ付いているのも良くない。(縁を「引きずる」と表現するのが悲しいけれど)

大学時代は躊躇なく言えていたようなことが、どんどん言えなくなっていっている。

タバコのポイ捨てもそう。

大学の時だったら間違いなく言えていた。

 

あの人は「できる人」だ。

でも、「正しい人」ではない。

少なくとも、僕の中の正しさからどんどん離れていっている気がする。

自分の「正しさ」を、人に求める必要はないけれど、「正しさ」がかけ離れていく人に、しがみついている必要もない。

悲しいけれど。

 

先輩。またいつか。