−230 「星野源みたいにしてください」が言えなくて
髪を切りに行った。
二ヶ月ぶり。天パも手伝って、モサモサになっていた。
でもこの髪質、嫌いじゃない。
なんかモサモサ感に気怠さがあって好きだ。
モサモサ頭に、眠そうな目、斉藤和義とかかっこいい。
しかし斉藤和義にしては短すぎる。
もーちょい伸びるのを待たないと。
今日は美容師さんにどう頼もうか。
…センター分けかっこいいな。
風呂上がりに試しにセンター分けにしてみたときも、なんか似合ってた気がする。
でも、ずっとセンター分けって、しんどそう。
「おしゃれしてます」感をずっと身に纏ってなきゃいけなそうで。
気乗りしない時は前髪下ろしてささっと手ぐしで流して出かけたい。
センター分けも、サイドから流すのもできる髪型…星野源だ。
「星野源みたいにしてください。」
…言えない。
星野源の髪型が似合うと思っている=星野源くらい整った顔をしていると思っている。
そう思われそうで嫌だ!
考えすぎなのはわかっている。
でもやっぱり恥ずかしい。
ネットをさらに見ていると、「星野源の髪型 失敗しない美容室での頼み方!」というサイトが出てきた。
ナイス!親切な人もいるもんだ。「星野源」というワードを出さずに、どうにか星野源みたいな髪型にしたい。
「マッシュショートと頼みましょう」
…マッシュって言いたくない。
マッシュって言葉の響きがまず恥ずかしい。あと、量産型モテたい大学生の髪型って感じがすごいして恥ずかしい。
こうして、星野源みたいになりたい僕は、頼み方がわからないまま予約時間を迎えた。
「今日どうしましょ?」
「あの…センター分けかっこいいなって思うんですけど、僕の髪の毛でもできますかね…」
「ちょっと短いかもしれませんけど、できると思いますよ。」
よし。まぁいいや。センター分けしんどい日は帽子でもかぶろう。
手際良く切り進めてくれる美容師さん。
終わったらびっくり。
短い髪の毛をなんとかセンターで分けてワックスで固めてくれたものの、短すぎて全く垂れていない。
頭が真っ平らに。
ゼルダの伝説に出てくるゴロン族みたいな頭になっていた。
家に帰って速攻スタイリングしてもらったワックスを落とした。
ゴロン族でウロウロするのは恥ずかしすぎる。
落として、乾かして鏡を見ると、そこには綺麗なマッシュ頭の自分が。
あーあ…
「星野源みたいにしてください」って、なんの恥ずかしさもなく言えるように育ちたかった。
ソラシドの本坊さんは、男なのに「剛力彩芽ちゃんみたいにしてください。」って言ったことあるって言ってたな。すげえ。
最近ネットだけで会話する友だちが増えた。
醜いところ見えない、見せないこのくらいの人間関係が自分には心地よい。