−5 素直に「地元」と呼べないけれど

3.26

 

嫌な記憶しかなくて、素直な気持ちで「地元」と呼べないような、生まれてから中学まで住んだ町。

そんな土地でも、やっぱり久しぶりに来て変わっている街並みを見ると、寂しいような気がしてくる。いや、寂しい。

素直に地元と呼べない。

素直に愛着を感じようとできない

 

小さい頃の記憶しかないこの街のラーメン屋で、最新の曲がかかっている。

 

ばあちゃんによくアイスを買ってもらったスーパーでライターを買って、学校帰りにヤンキーが溜まっていたコンビニでタバコを吸った。

毎日部活の友だちと歩いた通学路を、少しずつルートを変えて何度もバイクで走った。

 

記憶を塗り替えて回ったつもり。

嫌な記憶しかないけど、やっぱりここは僕の地元なんだ。

不思議といつかまたここに帰ってきたいと、そう思った。